職場で怪我をしたり事故にあったりした場合、労災を申請する方も多いと思います。
労災って普段あまり使わない制度ですよね。労災とは労働者災害補償保険の事を言います。
メリットは何となく知っているけど「本人にデメリットってあるのかな?」と考えたりしませんか。
また「労災を使うと会社に悪いかな、労災を使ったこと自体がデメリットにならないかな?」と思ったりもしませんか。
労災は労働者やその遺族の生活のための制度なので、申請する本人にはデメリットなんてないです。
初めて労災を使うあなた、労災を申請しようか迷っているあなたも必見です。
労災についてしっかり理解し、申請者本人になっても不安にならずに申請しましょう。
労災を使うデメリットは申請者本人にはない!

労災を使うデメリットは基本的に本人にはありません。
職場で事故にあったり、けがをしてしまい申請者本人になったり、仕事のストレスで病気になった場合、申請するか迷いますよね。
そして労災はあまり使う機会がないし、申請に時間がかかりそうと、面倒になることもあると思います。
ですが、労災なのに申請しない方が問題になりますので、きちんと申請しましょう。
また労災はデメリットはありませんが、影響しそうなことがありますので、そちらを紹介します。
併せて労災を使うメリットも紹介します。労災についてきちんと理解しましょう。
そして申請者本人になったら、デメリットがないとしっかり理解した上で利用するようにしましょう。
労災申請で唯一の影響!?会社によっては適用の可能性も
労災を申請したことによる影響は勤務先にもよりますが、1つあるかもしれません。
勤務先の評価基準等にもよりますので、全ての人に当てはまるとは限りません。
労災により仕事を休んだことが原因で出勤日数が減り、賞与が減額になる可能性はあります。
法律に「労災による休暇の賞与を減額してはいけない」といった内容はありません。
そのため、賞与の計算方法に出勤日数が関係してくる場合は、賞与が減額する可能性があります。
私が調べたところ、このことが労災を申請して影響する可能性がある、唯一のことと言えると思います。
労災を使うメリット3つを簡単にご紹介
労災を使うメリットは3つありますので、それぞれ簡単に解説します。
- 労災を使うと手厚い補償が受けられる
- 治療費の負担がゼロになる
- 事故の過失割合に影響を受けない
この3つをきちんと確認し、あなたがどんな保障を受けられるのか確認しましょう。
〈①労災を使うと手厚い補償が受けられる〉
労災は社会保険に比べて補償が手厚いのが特徴です。補償の対象はいくつかあります。
- 治療した費用負担
- 休業しなければならない期間の給料相当額の支払い
- 後遺障害が発生した時の補償
- 事故により被害者が死亡した場合の遺族への補償
このように、様々な面で補償されていて、手厚い補償と言われています。
また、労災独自の特徴として「特別支給金」があり、保険給付の上乗せ分として支給されます。
これは、通常の賃金と比べると、保険給付は低くなりがちです。そのため十分な補償を確保するために「特別支給金」という制度があります。
労災により休業補償等給付(仕事を休んだ)場合、特別支給金として給付基礎日額(3ヶ月以内の平均賃金)の20%が支払われます。
通常の休業補償給付は給付基礎日額の60%です。
特別支給金と合わせると、平均賃金の80%の支給を受けられる様になります。
このように、少しですが補償が上乗せされる制度になります。
〈②治療費の負担がゼロになる〉
労災を利用した場合、治療費に関しては自己負担の必要はありません。
また労災保険は現物給付といって、金銭以外の物も療養の給付対象となるようです。
これは「診察した際の投薬」「手術」「自宅での看護」など幅広いものも対象になっています。
後遺障害等により、自宅でも看護が必要になった場合のお金の心配がいらないのは、とても安心ですね。
療養の給付を受けるためには「労働者災害補償保険法」で指定している病院等を受診する事が条件になります。
一方で「一定の条件に該当すれば、指定病院以外を受診しても費用補償は受けられる」こともあります。
労災を申請するときに、きちんと確認するようにしましょう。
〈③事故の過失割合に影響を受けない〉
業務中に交通事故にあった場合、相手方の自賠責保険や任意保険からも補償が受けられます。
自賠責保険や任意保険の補償額は、事故の当事者同士の責任の割合である「過失割合」によって決まります。
例えば、自賠責保険は交通事故の被害者救済が目的となっています。
最低限の補償をしてくれる保険で、過失割合による保険金減額には条件がついてきます。
条件とは「7割以上の過失があった時に限って、自賠責保険の保険金が減る」という事です。
そのため交通事故の過失割合が大きい時には、相手方の自賠責保険から十分な保険金を貰うことができないのです。
過失が大きいのに補償額が減るなんて、本当にいやですよね。
労災保険の給付金は過失割合の影響を受けないので、過失割合が7割以上と思われる時は労災を利用する方がいいでしょう。
自分に非が少ない事故の場合は、労災補償があると本当に安心ですね。
同じ補償項目を二重で補償して貰える訳ではないので注意しましょう!
相手方からの自賠責保険や任意保険から保険金を受け取っていると、労災保険からの受け取り分で調整されます。
労災認定後のデメリットは会社が払う保険料が上がる!?

労災は「職場で災害が発生した」という事になり、会社にとってデメリットになると考える経営者も多いでしょう。
労災は本来起こってはいけないものになります。そのため、労災が起こってしまったこと自体がデメリットです。
ですが、労災申請がデメリットになるからと言って、「労災隠し」をすることの方がもっと大きなデメリットになります。
労災が起こった場合の会社にとってのデメリットを紹介すると共に「労災隠し」をした場合も解説します。
きちんと理解して、会社としても、労働者としても正しく労災申請をしましょう。
労災保険料が上がる可能性がある
労災が起こり申請を行った場合、会社が支払う労災保険料の金額が上がることがあります。
労災保険は「メリット制」という増減制度があり、制度に従えば労働災害の多さによって、労災保険料が変動するしくみになっています。
「メリット制」が適用される事業所の条件は決まっています。
- 100人以上の労働者がいる事業である
- 20人以上100人未満の労働者がいる事業であって、災害度係数が0.4以上である
②の災害度係数は、労働者数に、業種ごとに定められている一定の割合をかけて計算されます。
労災が発生しやすい危険な業種(林業・漁業・鉱業・建設事業・一部の製造行・運輸業等)はボーダーラインが低めになってます。
一般的なサービス業などは、メリット制が適用されるのは100人以上の労働者を使用している場合のみです。
ほんの数回、労災申請をしたくらいでは、大きな変化はない制度になっているそうです。
また、中小企業はメリット制の対象外となっていることが多いようです。
メリット制の対象外の場合は、労災保険申請をしても労災保険料が上がる事はありません。
あなたの勤めている会社が中小企業の場合は、労災を申請した事により保険料があがる心配はありませんね。
労働基準監督署の調査が入る可能性がある
労災申請をしたことにより、労働基準監督署が調査に来るんではないか!?と思う経営者の方もいらっしゃるでしょう。
労災の程度が軽いのであれば、大々的な調査を行う可能性は低いようです。
労働基準監督署が調査に入るのは「労災が発生する原因を見つけ、排除して発生率を下げること」が目的です。
調査は面倒ですし、仕事が止まってしまうこともあり、できれば調査に入ることは避けたいですね。
労災が沢山発生している会社でなければ、労働基準監督署に労務管理を問題視されることは少ないようです。
会社のイメージや信用が低下する可能性がある
労災を申請すると、労災が起こった事が世の中に広まり、会社のイメージや信用が低くなってしまうのでは!?と思うこともありますね。
ですが、労働基準監督官は守秘義務があるので、報道機関などに情報を漏らすことはありません。
労災が起こった事が世の中に広まってしまう可能性があるのは、労災申請した本人、周囲の同僚からが多いようです。
最近ではSNSに投稿し、世の中に広まるケースが増えています。
これを防ぐためにも、会社として労災に真摯な対応をし、従業員から信頼される会社、安心して働ける会社にすることが必要です。
労災隠しは違法!絶対にダメです!!
労災が起こってしまったことを隠すことや、うその内容を記載して申請する事は「労災隠し」になります。
労働者安全衛生法で「労災隠し」には50万円以下の罰金が定められています。
労働者災害を労働基準監督署に報告することは義務とされています。
また労災が起こった場合、会社側に故意または過失がある場合は、労働者から損害賠償請求される可能性もあります。
労災申請をきちんとしていれば、保険給付に対応する金額は損害賠償を免れます。
ですが、会社が労災隠しをしていると、労働者は保険給付されませんので、会社が全額、損害賠償をしなければなりません。
そして労災隠しが分かると、世の中からのイメージは低くなるでしょう。
イメージが悪くなると、会社存続まで影響を与えかねません。
労災隠しは違法な上に、会社存続にまで影響を与える行為なので、きちんと申請するようにしましょう。
労災を使うデメリットは通勤中事故の場合もある?

通勤中に事故にあった場合、労災保険、自賠責保険、任意保険のどれを申請するのか、法律では決まっておらず、あなたが選びます。
事故の状況により、申請する保険によってはデメリットがあるようです。
また通勤中の事故による労災申請をする場合には、気を付けないといけないことがあります。
せっかく申請した保険がデメリットばかりだったら嫌ですよね。
そこで使う保険によってどんなデメリットはあるのか、どの保険を申請するのが良いのかまとめました。
通勤中に事故にあってしまったあなた、しっかり確認して労災か他の保険か、デメリットが少ない保険を申請しましょう。
通勤中の事故で労災保険を使うデメリット
労災保険のデメリットは、2つあるので確認しましょう。
- 慰謝料がない
- 休業補償が給付基礎日額×60%×日数になり、最初の3日間は待機期間となり対象外
自賠責保険や任意保険には、慰謝料があり、また休業補償も休業した日数分の収入全額となります。
そのため労災を使った場合は、デメリットになるでしょう。
労災保険を使った方が良い場合は?
あなたの過失が大きい時や、過失割合を相手と争っていて分からない場合は労災保険の方が良いでしょう。
自賠責保険では、労災を使うメリットでも紹介した通り、過失割合が7割以上の場合は保険金が減額されるためです。
労災保険は減額はありませんので、任意保険に加入しておらず自賠責保険のみの場合は、労災保険を先に申請する方が良いでしょう。
通勤中の事故で労災を申請する時の注意点
通勤中に事故に遭った場合は「通勤災害」となります。通勤災害の「通勤」とは、労働者の住居と就業場所の往復です。
またその経路は「合理的な経路及び方法によるもの」となっております。
通勤経路や方法は会社の規則にのっとって決まっているので、確認が必要です。
基本的に決まった通勤経路や方法で通勤している時に起こった事故のみ、労災と認められることになっております。
決まった通勤経路で通勤していても、たまには買い物をすることもありますよね。労災と認められる場合と認められない場合があるようです。
具体的な例を挙げてみましたので、確認しましょう。
- 通勤経路の近くの公衆トイレに行くときや、経路上にあるお店でタバコや雑誌の購入をした場合は労災補償の範囲になる可能性がある
- 日用品の購入でお店入った場合、買い物中の事故は補償されませんが、買い物を終えて帰路につけばまた労災補償の範囲になる
- 診察を受けるために病院への立ち寄りも、日用品の購入と同様の扱いになる
日常生活で必要なことをする場合、通勤経路から離れるのが必要最小限であれば問題ないようです。
- 退勤後に同僚や友人と食事やお酒を飲みに行き、その後帰路についた場合は労災補償の範囲外となる
- 退勤後に1人で食事やお酒を飲みに行くことも同様、労災補償の範囲外になる
帰路の途中で食事やお酒を飲みに行くことは、やむを得ない行為ではないという判断になるようです。
そのため労災補償の範囲外となり、事故に遭った場合は労災申請をしても認められないので注意しましょう。
労災保険と他の保険の併用は可能
二重、三重に補償を受け取らない限り、労災保険と他の保険を併用することは可能です。
例えば、通勤中の事故に遭い、自賠責保険で補償を受けてから労災保険からの補償を受けることもできます。
その場合、自賠責保険でもらった補償は労災保険からは控除されます。
任意保険を使う場合も同じで、すでに支払われた部分は控除されます。
労災保険の特別支給金は労災独自の補償ですので、他の保険から控除されることはありません。
自賠責と労災は優先順位が決まっていない
自賠責保険を管轄している国土交通省と、労災保険を管轄している厚生労働省で取り決めがされています。
その取り決めは「自賠責保険から給付を優先させ、労働者にもそのように指導すること」ということです。
このことを「自賠先行」と言いますが、これは何の強制力もないようです。
あくまで省庁間の事務処理の都合を考えて決まったことに過ぎないのです。
そのため、自賠責保険と労災保険、どちらの支払いを優先的に受けるかは、自由に選択できます。
まとめ

- 労災を使うデメリットは本人にない
- 労災を使い本人に影響があるとすれば、賞与が減る可能性がある
- 労災を使うメリットは3つあり、補償が手厚い、治療費の負担がない、事故の場合は過失割合に影響がない
- 労災が起こったこと自体が、会社へのデメリットになる
- 労災申請された場合の会社へのデメリットは3つあり、労災保険料が上がる可能性、労基署の調査が入る可能性、会社のイメージや信用低下の可能性
- 労災隠しは違法で会社存続にも影響する
- 通勤中の事故で労災を使うデメリットは、慰謝料がない、休業補償が全額出ないの2つ
労災を申請するとき、本人にデメリットがないことはしっかり理解してもらえたかと思います。
労災事故なのに隠すことや、隠すように指示することは違法ですし、会社存続にまで影響があるのでやめましょう。
あなたが遭った事故が労災になるのか、またどの補償を使った方が良いのか確認して申請するようにしましょう。
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