私たちの周りにはさまざまな契約書があふれています。
契約書の内容をあまり気にせず契約することもあるのではないでしょうか。
トラブルを未然に防ぐためにも、有効期間は注意して決めなければいけない項目の一つです。
ですが後になってトラブルになってしまうことも少なくありません。
「契約書を見たら有効期間の記載なしだった!これ有効なの?解約は出来る?」
「昔の契約書、有効期間の記載なしだから、後になって請求されてしまった。どうしたらいい?」
などの疑問を持ったり、何らかのトラブルに巻き込まれてしまったり…なんてこともあるかもしれません。
契約書に有効期間が記載なしの場合でも、法的効力はあります。しかし、正式な手順をふめば解約もできます。
そもそも有効期間とはどんな契約に必要なのかといった疑問についてもご説明します。
目次
契約書に有効期間が記載なしでも効力はある!

契約書をふと見返して、「有効期間が記載なしだ!」と気になったことはありませんか?
これっていつまで有効なんだろう…、そんな不安も浮かんできますよね。
すでに必要の無い契約であれば解約することも考えなければいけません。
ここでは、契約書に有効期間が記載なしだった場合の取り扱いについてみてみましょう。
有効期間の記載が無い契約書の効力
継続的な契約で契約書に有効期間が記載なしの場合、効力があるのか不思議に思いますよね。
この場合、有効期間の記載がなくても効力はあると考えていいでしょう。
そもそも契約はお互いが「この条件で契約しましょう」、「いいですよ」などの口約束でも成り立つものです。
当事者同士が合意すれば何年、何十年でも契約は成立すると考えていいのです。
有効期間が無い契約を結んだがために、効力が消滅せず、後になって、何か請求されたりすることもあり得るので、注意する必要があります。
契約書に有効期間がなくても解約できる!
有効期間がない契約は基本的に効力はいつまでも発生していると考えていいと言いました。
ということは、逆にいつでも解約することができると考えてもいいのです。
正式な手順をふめば、契約書に有効期間の記載がなくても解約は可能なのです。
民法第651条では、委任契約において、当事者同士いつでも自由に契約が解除できるとう内容が記されています。
委任契約とは、法律行為をお願いし、相手方がこれを受諾することです。具体的には、弁護士に訴訟の代理をお願いする時や、不動産業者に自分の土地を売る時などがあげられるでしょう。
委任者、受任者同士いつでも契約を解除できますが、相手側の不利な時に解除したり、委任者が受任者の利益を目的とする委任を解除したときは、損害賠償を払わなといけないケースもあります。
いつでも契約を解除できるけど、自分が不利な時に契約終了を申し込まれたら損害賠償を請求できる、逆もしかり、という決まりです。
しかしやむを得ない場合は損害賠償を払わなくてもよいとも定めていますので、過去の判例などを参考にすると良いですね。
任意解除権とは
現代は様々なサービスが拡充し、高額な請求をされたり、トラブルに巻き込まれることも少なくありません。
消費者契約法では、そのような消費者を守るために、解約が難しかったり、高額な違約金が定められていた場合は不当として無効になる場合もあります。
消費者契約には「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」という項目があります。
消費者契約法9条1号では、一度契約したが何らかの理由で解除したい時、違約金が発生しますがその金額が、
取引した側が実際にこうむった損害額よりはるかに高額な金額を請求された場合、無効にできる。
または、前払いで払ったお金を返してもらえないといった場合も、無効にできるということが定められています。
例えばウェディングドレスをレンタルしたが、解約を申し込んだらレンタル料の100%の請求をされてしまった!
しかし、この消費者契約法9条1号を根拠にした裁判によって無効になった事例が有名です。
また、大学入学を辞退した人が前払いとして払った入学金や授業料が返還されないのは不当、として起こした裁判もありました。
これは大学側が不当と認められ、3月31日までは、入学金を除く前払いした金額分は返還されることになりました。
消費者契約法9条2号は、支払い期日がすぎてしまって、違約金を払うとき、過ぎてしまった日数分の違約金の割合が14.6%を超えた場合は無効になると定めています。
例えば、月8万円の家賃を滞納してしまった。一か月分の家賃対し、年25%の延滞金を払うという契約を結んだとしたらそれは不当として無効にすることができます。
有効期間の記載がなかったがために、後になって請求が来てしまって困っている方も、上記の権利が認められています。
一度不当な契約ではないか、無効になるかを確認してはいかがでしょうか。
あきらめる前に、お近くの法律事務所や消費者センターに相談しましょう。相談に乗ってくれますよ。
契約書に有効期間の記載がある時の解約は?
では、有効期間が記載されている場合で、期間内に解約したい場合はどうでしょう。
そんなときも契約書をよく読んでみましょう。もしかしたら、中途解約条項という規定が定められているかもしれません。
有効期間が終了する前でも解約できる余地があることで、リスクを抑えることができるという項目が記載されていることも多いです。契約書には下記にように記載されます。
第〇条(中途解約)
甲及び乙は、〇か月前までに相手方に書面をもって通知することにより、本契約を解約することができるものとする。
契約終了前に解約したい場合は、この中途解約条項を確認し、記載されている期日前に解約を申し出ましょう。
期日後に解約したい場合でも基本的に受け入れられますので、まずは申し出てみましょう。
契約書の有効期間は一度きりの契約のときは必要がない!?
そもそもどうして有効期間の記載がない契約書が存在するのでしょうか。
有効期間は一度きりの契約か、継続的な契約かで書き方が異るからです。
契約書の有効期間は一度きりの契約のときは必要がありません。
例えば、この時期までに商品を納品してほしいとして、その場合「履行期限」として契約書に記載すればいいのです。
履行とは決めたこと、言ったことなどを実際に行うことです。
一度きりの契約のときは「有効期間」ではなく「履行期限」で十分なのです。
契約書に有効期間があっても自動更新というルールもある

有効期間とは、簡単に言うとトラブルを避けるために取引する期間をこの日からこの日までと決めて、この間は気持ちよくやりとりしようよ!という期間ですね。
契約というのは口約束でもできるのですが、文章にすることでお互いの義務をはっきりとさせることができ、またトラブルも抑えることができます。
有効期間という項目を設け、契約の開始日と終了日を契約書に明記することによって、取引期間を定めスムーズに進めるようにするのです。
第〇条(有効期間)
本契約の有効期間は、〇年△月□日から〇年△月□日までとする。
ほとんどの契約書はこのような有効期間や契約期間が記載されているはずですよ。
しかし、この契約期間が終わっても自動で契約が更新される場合もあるのです。
契約期間が終了すると自動更新される条項
一般的な契約書のほとんどは継続的な契約で成り立っており、継続的な契約は自動更新条項という項目で記されます。
例えば派遣契約や売買契約などが継続的な契約ですね。
継続的で長期の関係を続けるため、契約を変更したり、再契約する際の手間を省くためにあります。
ようするに「お互いのビジネスの関係、雇用関係を続けましょう!でも毎回契約書つくるのは面倒だから、期間が終わったら自動的に更新するようにするね!」ということですね。
先ほどの例に自動更新の文言を付け足したものが下記になります。
本契約の有効期間は、〇年△月□日から〇年△月□日までとする。
ただし、期間満了日の〇か月前までに、いずれの契約当事者からも異議のない場合には、本契約と同じ条件でさらに〇年間更新されるものとし、その後も同様とする。
何か月前にどちらかが何らかのを申し出なければ、自動で更新されることを明記するのがポイントです。
契約書の有効期間と締結日の関係

これまで、契約書の有効期間の終わりについて説明してきましたが、有効期間の始まりはいつなのでしょうか。
契約締結日イコール有効期間の始期ではない
契約の有効期間と契約の締結日は一緒なの?という疑問を持たれるかもしれません。
また実際に契約書の効力が発生するのは、どこからなのでしょうか。
それは当然、契約の有効期間をいつにしたか、によります。
締結日とはあくまでも契約を締結した日であって、必ずしもその日から契約が有効になるわけではありません。
契約の効力が発生するのは、有効期間の始期になります。
契約締結日:2021年3月31日
契約有効期間:2021年4月1日~
上記の場合、効力が発生するのは2021年4月1日からということになります。
契約締結日イコール有効期間の最初の日ではない、ということ覚えていてください。
契約書の有効期間前に効力を発生させる遡及契約
契約書の有効期間前に効力を発生させる契約を遡及契約(そきゅうけいやく)といいます。
遡及(そきゅう)とは過去にさかのぼって、効力を発揮することを意味します。法律用語として使われることが多い言葉です。
契約書を作る前に取引が開始し、あとで契約書を作る際に、過去にさかのぼって契約の日付を定めることができる条項です。下記のように記載されます。
「本契約は契約締結日にかかわらず、〇年△月□日に遡って効力を生じることする。」
「契約締結日にかかわらず、有効期間は〇年△月□日より〇年間」
当事者同士の合意があれば可能な契約ですが、実際に契約を締結した日よりも過去の日付を締結日した場合のことをバックデートと言います。
例えば 4月1日に取引を開始、契約書を4月20日に作成した際に、4月1日の日付で契約を締結日にすることです。
実際の締結日と違いがあれば嘘の記載になり、信頼関係を著しく下げかねません。
遡及契約をする際は正しい記載が求められますので、契約を締結する時は十分気をつけましょう。
まとめ

- 契約書に有効期間が記載なしでも解約はできる
- 契約書の有効期間の記載なしでトラブルが起こった場合は法律事務所や消費者センターに相談を
- 契約書の有効期間中に解約したいときは中途解約条項を確認
- 契約書の有効期間の記載なしの時は契約内容が一度きりのものが多い
- 契約書に有効期間があっても自動更新の条項があれば自動で更新される
- 契約書の有効期間と締結日、効力発生日はイコールではない
- 契約書の有効期間前に効力を発生させる遡及契約
契約書を見ても有効期間の記載がなくて困っているあなたの参考になったでしょうか。
トラブルを未然に防ぐための契約書ですが、普段生活していても、ビジネスの面でもそこまで契約書を注意して読むことは、なかなかないですよね。
確認せずあとになって後悔することも少なくはないです。
契約書を作る側も、契約を交わす側も、トラブルを防ぐために、有効期間の項目は注意して作成、確認する必要があるということも分かったと思います。
またトラブルになってしまっても、あきらめないでぜひ相談してみてください。消費者に味方になってくれる法律があるのですから。
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